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イルカの日

『イルカの日』 The Day of the Dolphin (1973・米)
配給/日本ヘラルド映画
監督/マイク・ニコルズ
脚本/バック・ヘンリー
原作/ロベール・メルル
製作/ディック・バークマイヤー、ロバート・E・レリア
製作総指揮/ジョーゼフ・E・レヴィーン
音楽/ジョルジュ・ドルリュー
撮影/ウィリアム・A・フレイカー
編集/サム・オスティーン
出演/ジョージ・C・スコット、トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー、ポール・ソルビノ、フリッツ・ウェーバー、ジョン・コークス、エドワード・ハーマン、レスリー・チャールソン

イルカが人間の言葉を話す! イルカが大統領を暗殺する!?
全く新しい感動と興奮の世界! 鬼才マイク・ニコルズが 卓抜な着想で放つ注目の話題作!


海洋動物学者として世界的に著名なジェイク・テリル博士(ジョージ・C・スコット)は、フロリダの沖合い遠くの小島にイルカを研究するための研究所を持っていた。現代科学の粋を集めて建設された施設で、6人の助手たちと共に、1頭のイルカに簡単な英語を教えていた。
聡明なテリルは自分の研究が、政治の力によって悪用される危険性を充分知っており、スポンサーである財団にも詳細な報告はしていなかった。だが、政府の調査機関では早くもそのことをかぎつけて、テリルの研究に対する調査を開始していた。テリルが母親代わりになって育てたイルカは「ファー(アルファー)」と名づけられ、彼を「パー(パパ)」と、呼吸孔から出す可愛い声で呼ぶほどに成長していた。いってみれば、ファーはテリルと彼の妻マギー(トリッシュ・ヴァン・ディーヴァー)の1人息子のような存在だったのだ。だが、マギーは夫を応援しながらも、尋常ならざるイルカへの愛情(執着)に、なにか整理しかねるとまどいを覚えていた。
テリルはそんなファーに花嫁を与えることにした。この牝イルカは「ビー(ベータ)」と名づけられた。プールで楽しそうに遊び廻る2頭のイルカは幸福そうだった。ファーがビーにイルカの言葉を教わったため、一時テリルとの英語による会話に応じなくなるという問題が起こったが、それが解決すると学習はどんどん進むようになり単語をいうだけだったファーが構文も覚えるようになった。ビーもファーから教わって、人間との会話ができるようにまで成長した。
財団がテリルの研究に介入し始めたのは、その頃だった。水上飛行機で島にやってきた財団管理官デマイロ(フリッツ・ウェーバー)は、研究の具体的成果をこれ以上秘密にするなら、援助を打ち切ると通告してきた。やむなくテリルは彼に研究所の中を案内し、そして政府の調査機関員マホニー(ポール・ソルビノ)の訪問を許してしまった。マホニーはデマイロの弱点を握り、圧力をかけていたのだ。翌日、島を訪れたマホニーはテリルの非協力的な態度を感じ取り一通りの研究施設とイルカを見ると去っていったが、すぐにまた1人の部下を連れ密かに引き返してきて、テリルたちに悟られないように島のジャングルの中にひそんだ。
次にやってきたのは財団の理事5人だった。一同はテリルと会話を交わすファーに眼を見はり、テリルとマギーを財団事務局に招待した。だが、異様な雰囲気に気づいたテリルは急いで島に戻ったが、すでにファーとビーは研究助手のデビッド(ジョン・コークス)に連れ去られていた。デビッドは財団のまわし者だったのだ。消沈する夫にマギーは、「あなたのせいじゃない」と慰める。テリルは「私が間違っていた」と言う。「私がイルカ語を話せばよかったんだ」。その苦しむ様は、傲慢な人間への罰のようだった。
頭をかかえるテリルたちの前に、突然マホニーが姿を現わし、部屋の中に仕掛けられた盗聴マイクをあばき、一同を庭に連れ出して事の真相を語って聞かせた。
財団の理事の1人は元CIAの高官である。マホニーが属しているのは同じ政府でもまた別の機関で、彼は財団理事たちの企んでいるらしい陰謀を探りだすために調査を続けていたのだ。その頃、ファーとビーはカリブ海のある場所で、デビッドから特殊な訓練を受けていた。それは時限装置と磁石のついた機雷を、大統領の乗ったヨットの船底につけようという陰謀だったのだ。爆弾を背に無邪気に泳ぐイルカたち。だが、悪人たちはファに嘘をつく。それまで人間の事を信頼していたファーは「人間 ない事 言う」(人間は嘘をつく)と呟く。
パーに会いたくて敵のスキを見て逃げ帰ったきたファーから陰謀の内容を聞いたテリルとマホニーは急いでモーターボートで出発したが、途中で燃料が切れてしまい、、最後の手段としてテリルは、ファーにビーを探し出して止めるように命じた。
[ネタバレ反転]
ファーは間一髪でそれに成功し、おまけに機雷を理事たちの乗った船につけた。テリルは研究施設・書類をすべて廃棄・焼却して逃げる決心をする。過去の自分の研究が、純真なイルカの心を傷つける結果になったことを後悔したからだ。ファーとビーを、「二度と人間の言葉をしゃべってはいけない」と諭し海に放し、外海へでるよう命じる彼の心は、はり裂けんばかりに痛んだが、すぐやってくるであろう組織の復讐を考えると、こうするより他に方法がなかった。
「ファー パー 好き いっしょ」と別れを拒むファーにテリルは「イルカとして生きろ。人間は悪い」と語る。夫婦は、彼らを慕い、いつまでも海岸から動かないイルカたちに振り向くことなく「パーはもういない!」と厳しく突き放す。「パー」といつまでも海岸で呼びつづけるファーの声が、彼ら夫婦の耳にはつらかった。






フランスの作家ロベール・メルルのSFサスペンス小説を、「卒業」の脚本・監督コンビが映画化した異色スリラー。最も知能指数が高いといわれるイルカの生態を利用した政治的陰謀を阻止せんとする海洋学者の戦いを描きます。G・ドルリューの美しいスコアとイルカの鳴き声が切なく、印象的な作品です。物語自体は「陰謀もの」ですが、作品の肝は科学者夫婦とイルカの美しい交流です。ちなみに科学者夫婦役のジョージ・C・スコットとトリッシュ・ヴァン・ディーヴァーは実の夫婦で、さすがの息の合い方です。今見ると少々テンポの遅さを感じますが、出演者のきっちりした演技と、ニコルズ監督の丁寧な演出、美しい音楽に可愛いらしいイルカの姿で、見ごたえのある作品となっています。
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